聖地

2002年11月14日
少し風が強かった。

乗ってきた電車は、ついさっきまで地下鉄だった。外に出た地下鉄は決して「地下」鉄ではない。スケート選手が、夏だからって自転車に跨る姿が重なる。あれ、ホントは地下鉄でしょ。スケーターでしょ。

駅に降り立つとそこは普通の田舎の駅。キオスクが一軒。その他お店がちらほら。ちらほら。でもここは間違いなく「聖地」なのだ。

いきなりタクシーには乗車拒否を食らう。
「近いんだから歩けよ」
早口の英語は恐らくそうまくし立てたのであろう。世界一と評されるイギリスのタクシー。こういうこともあるのか、本当に申し訳なくなるくらい近いのか。

しかし本当に美しい街だ。タクシーなんて乗らなくてよかった。何人の人が胸を高鳴らせながらここを歩いたのだろう。そして世界の頂点を夢見る人たちがこの空気を吸っていたのだ。そんなことを考えながら、風に吹かれながら歩いた。

風は追い風だった。でも「10月のロンドン郊外にしては暖かい日」に分類されるような小春日和。英国の小春日和。

ウィンブルドン。そこはまさに「聖地」だった。観客席の一部から見下ろす「聖地」は、あくまでも選ばれし者しか受け入れない威厳が保たれていた。1年に1度、最後の一人だけに与えられる喝采。それは特別なものなのだ。

僕らはしばし見とれ、声を失い、そして思いを馳せた。

聖地巡礼の行程はいつの間に過ぎ行き、僕らは向かい風の中、先程の駅に向かった。街は相変わらず美しかった。

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