成層圏の蒼

2002年12月23日
冬場は空気が澄んでいて朝の寒さは厳しいけれど、顔を刺すような清冽な大気は身体だけでなく、精神までも奮い立たせるような力を持っている。それこそスカイブルーの絵の具を少し水に溶いて、一面を均一に塗った水彩画のような美しい空が広がるのもいい。

成層圏の空の色も吸いこまれるような青、いわゆる蒼空だ。眼下に絨毯に似た雲を見ながら僕らは飛んだ。高度1万m以上の空にいるという実感は、与圧の効いたジャンボ機の機内では希薄なのだが、一目窓を覗き、そんな光景が広がっているのを目の当たりにすると嫌でも今自分がいる場所を再確認することができる。

空の上。それは僕にとって至上の喜びなのだ。

祖父が旧日本陸軍のパイロットだったせいもあるのかもしれない。直接祖父と面識はないのだが、小さい頃から、飛行機雲の先っぽには人が乗っていると知ってからは大空への夢を常に抱き続けてきた。しかし小学校の頃から目が悪くなり、あえなくパイロットの夢は断念せざるを得なくなる。スカイブルーの冬の空に、一条の白線が伸びていく…。絶対に手が届かない憧憬が美しさを際立たせているのだろうか。

ヨーロッパに向かう飛行機は日本海に出て、シベリアを北上。ロシア領空内を通過し、バルト海へ抜ける。西に向かって経度を逆算していくような方向に進むため、日が全く沈まない。時速1,000kmで時計を逆に回していく。

幸い窓際の2人席だったため、エコノミーであったにも関わらず、ゆったりと過ごすことができた。主翼の翼端が常に窓から見える位置も僕にとってはかなり満足。しかし帰りは機内中央の4人席の内側であったので、辛いフライトになったことを考えると、世の中うまくバランスが取れるようにできているものだ。

最近のジャンボ機は各座席にモニターが付いていて、様々なサービスが受けられるようになっている。例えば映画、ゲーム、音楽、ニュース番組などなど。映画も視聴可能プログラムが充実しており、結局「スパイダーマン」「アメリ」「ブリジット・ジョーンズの日記」の3本を見ることができた。日本に帰ってきてレンタルショップに並ぶ前に見たのだと知った時は、小さな優越感を抱いた小市民な僕でした。

今日も澄みきった冬の空。バチカンやベルサイユでは、幾条もの飛行機雲が交差して網目のようになっていたことを少し思い出した。

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