バンテリン事件顛末記

無謀な行動だとは思ったが、誘惑には勝てなかった。初売りで買ったボード、その初滑り。首は痛いが、滑ってみてダメだったらビールでも飲んだくれていればいいや、なんて軽い気持ちで。

蔵王の白い峰々が見えてくるにつれ、心は踊る。ただ車が雪道で揺れるたび、九折のカーブでハンドルを切るたび首がズキズキと痛む。大丈夫かなぁ？

天気は最高！早速ブーツを履き、ボードを装着。といきたかったが、ブーツがやけに緩い。普段の靴よりも更にマッチさせるため、まさにぴったりのブーツを選んだはずなのに（初売り限定がそのサイズしか残っていなかった事情も大きいけど…）。

またステップインの板もうまくはまらない。K2のビンディングは前後の金具で固定するタイプだが、後ろがどうしても入らない。結局雪に座ってカチカチはめてみる。ステップインの意味がない。むしろ普通の方がましだ！ちょっと腹を立ててみる。

なんとかはまって、いざ1年ぶりのスノーボード。えっと、どっち向きに滑るんだっけ？なんて考えていたら早速転んだ。大丈夫か、俺。

でもちょっと滑るとすぐ思い出すもので、結構スイスイ滑ることができた。自転車と同じで一回滑れると身体が覚えているもんだ。でもやっぱりブーツが緩い。踵が浮きまくる。

昼休みにブーツの足首に付いていた謎の紐の存在に気付く。一緒に行った人とその機能について語っていると、ふと天啓が…。

お〜ここに靴紐を通すんだね！お〜きっちり締まるよ！すごいよ！ていうか店員教えろよ！

昼はカレーそばを食し、首の付け根にバンテリンを塗り、午後は颯爽と滑る。緩斜面に物足りなくなって、中級者（もしかしたら上級者）コースに出陣。…あっさり玉砕。またホームコースに戻り修行に励む。

ある時リフトに乗っていると、ポケットから何かがポロッと落ちた。下に落ちてしまって、それが何かはわからなかったが、携帯もバンテリンも入っていたのであまり気にしていなかった。

滑っている間は首の痛さも忘れ、初滑りにしてはそこそこ上出来だったので、満足して下山。麓の温泉で一風呂浴びて帰ることになった。

脱衣所でウェアを脱ぐ。ゲレンデでは電波状態が悪かったので、新着メールを確認しようとポケットから携帯を取り出した。

うわ〜〜〜〜〜〜
携帯がバンテリンまみれになっている！おニューのウェアがべとべとになっている！

さっきリフトで落としたのはバンテリンの蓋だったのだ。たぶんもともと緩く締めていた蓋が、転倒の衝撃などで外れてしまったのだろう。漏れていたのに匂いに気付かなかったのは、もう慣れて麻痺していたからだろう。それにしても…

結構よく効くし「バンテリンあると有利です！」というラモスの言葉もまんざら嘘じゃねーな、と思っていたのに…。携帯が生きていたことだけが救いだけど。

バンテリンめ！今度は貼り薬にしてやる！

…なんの解決策にもなってねーな。