ロンドン上空Flypass
2003年6月20日 旅行夕暮れのヒースロー空港から、僕らは研修旅行の帰路に着く。仕事を忘れ、束の間の自由を謳歌した2週間。
空港に向かう高速道路から見える景色は、豊かな緑をたたえたサッカーの練習場。今日地下鉄で拾った新聞の紙面は、フルハムに移籍したばかりの稲本の活躍を大きく取り上げていたっけ。
この旅で訪れた空港はヒースローで何ヶ所目になるだろう。
成田から始まり、フランクフルト、チューリッヒ、ローマ、ミラノ、シャルル・ドゴール、そしてヒースロー。
空港はごった返していた。ユーロはとっくに使い切っていたので、さほど残金整理に苦労することはなかった。
ブランドショップが立ち並ぶ空港内、手持ち無沙汰な僕は一人で余韻に浸っていた。暮れなずむロンドンの地を車輪が離れた瞬間に、この旅の最後が始まる。
自重と乗客と満載の土産物を詰めたスーツケースをもろともせず軽やかに舞い上がった機体は、右に旋回しながらロンドン上空をFly passした。うっすらと暮れていく街並みは既に灯りを点し、ロンドン随一の繁華街ピカデリーサーカスと思われる派手な電飾もはっきりと確認できた。
それら灯りのどこかでは稲本がボールを追い駆けているかもしれない。スタジアムとおぼしき煌煌たるカクテルライトも目に飛び込んでくる。
ふと襲われる既視感。どこかでこの風景は見たことがある。
街と街を繋ぐ幹線道路に車のライトがゆっくりと動いている。街の光は適度な大きさでまとまり、適当な距離を保って点在している。
ふと頭をよぎるメロディー。
ユーミンだ。
そうだ。ルージュの伝言だ。高校生の時、初めて女の子とデートをして観た映画「魔女の宅急便」の旅立ちのシーン。箒に跨ったキキが黒猫のジジを連れ、ラジオをぶら下げて飛ぶその眼下に広がる風景。
全く同じ映像がリプレイされたかのような錯覚。機体中央の席で窓が見えなかったため、モニターを凝視しながらそんな思い出に身を任せた。
ただ一つ違うのは、キキが希望を胸に飛んでいたのに対し、僕らは日常へ帰還する少々重苦しいフライトだったことだ。機体は高度を上げ、バルト海を抜ける。偏西風に乗り、確かに現実がある場所へと容赦なく僕らを運んでいった。
空港に向かう高速道路から見える景色は、豊かな緑をたたえたサッカーの練習場。今日地下鉄で拾った新聞の紙面は、フルハムに移籍したばかりの稲本の活躍を大きく取り上げていたっけ。
この旅で訪れた空港はヒースローで何ヶ所目になるだろう。
成田から始まり、フランクフルト、チューリッヒ、ローマ、ミラノ、シャルル・ドゴール、そしてヒースロー。
空港はごった返していた。ユーロはとっくに使い切っていたので、さほど残金整理に苦労することはなかった。
ブランドショップが立ち並ぶ空港内、手持ち無沙汰な僕は一人で余韻に浸っていた。暮れなずむロンドンの地を車輪が離れた瞬間に、この旅の最後が始まる。
自重と乗客と満載の土産物を詰めたスーツケースをもろともせず軽やかに舞い上がった機体は、右に旋回しながらロンドン上空をFly passした。うっすらと暮れていく街並みは既に灯りを点し、ロンドン随一の繁華街ピカデリーサーカスと思われる派手な電飾もはっきりと確認できた。
それら灯りのどこかでは稲本がボールを追い駆けているかもしれない。スタジアムとおぼしき煌煌たるカクテルライトも目に飛び込んでくる。
ふと襲われる既視感。どこかでこの風景は見たことがある。
街と街を繋ぐ幹線道路に車のライトがゆっくりと動いている。街の光は適度な大きさでまとまり、適当な距離を保って点在している。
ふと頭をよぎるメロディー。
ユーミンだ。
そうだ。ルージュの伝言だ。高校生の時、初めて女の子とデートをして観た映画「魔女の宅急便」の旅立ちのシーン。箒に跨ったキキが黒猫のジジを連れ、ラジオをぶら下げて飛ぶその眼下に広がる風景。
全く同じ映像がリプレイされたかのような錯覚。機体中央の席で窓が見えなかったため、モニターを凝視しながらそんな思い出に身を任せた。
ただ一つ違うのは、キキが希望を胸に飛んでいたのに対し、僕らは日常へ帰還する少々重苦しいフライトだったことだ。機体は高度を上げ、バルト海を抜ける。偏西風に乗り、確かに現実がある場所へと容赦なく僕らを運んでいった。
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