僕は営業である。自社製品を得意先に使ってもらうのが仕事。様々なデータを用いてベネフィットをアピールする。

もちろん相手は人間なので、製品を紹介するという行為も人間関係の中で成立している。つまり相手のパーソナルな部分を知っていたり、共有する何かがあることにより関係はより密接なものとなり、商談も上手くいくケースが多い。

以前は交際費を湯水のように使い、領収証の数が仕事をした証であった時代もあった。バブル崩壊と共に不況の波は否応なく僕らの業界にも押し寄せ、そして経費削減という錦の御旗の下で昔を回顧している暇もなくなった。

同業者の何人かがお縄になった。贈収賄。派手だったウチの会社も接待が激減した。

人間関係を一気に醸成させる手段として、接待はもっとも手っ取り早い。なにせパーソナルな情報も共有できる何かもその場で見出すことができるのだから。だけど、今の僕には接待という武器はない。

僕の得意先の殆んどが公務員。国家公務員倫理規定法というどこぞの省庁の事務次官がめちゃめちゃにした「公務員の倫理」を守る法律があるために、公務員相手に接待を行うとする側、される側双方が、狭い部屋のパイプ椅子でカツ丼を涙ながらに食べるはめになる。およそ接待とは言いがたい食事や偶然同席したとしても罰せられる可能性がある。「李下に冠を正さず」だそうだ。くわばら、くわばら。

限られた手段の中で、最大限の効果を得るためにはどうしたらいいか?僕らは日々考える。でも会議で導き出される答えは「とにかく得意先を回れ」。上司連中は札束で頬をはたきながらエラくなっていった人達が多い。もちろん全ての偉い人がそうだ、とは言わないけれど。その指示が正しいかどうかは、僕ら自身が判断するしかない。

人に何かを伝えるということ。
その困難さは仕事以外でも共通する。
僕は誰かに何かを伝えられているのだろうか?

今日発した言葉が、ひとつでも明日に繋がっているものでありますように。
そして誰かの心に残っていますように。

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