無造作にばら撒かれた光。
2005年5月1日 ツーリング三陸海岸のキャンプ場にて。
その日の晩御飯は、秋刀魚の缶詰をご飯にかけたサンマ丼。途中のくたびれた商店で買ったビールとよく合う。テントの設営を終えて、キャンプ場備え付けの木のテーブルと長椅子で食事の用意を始めた頃から、夜の帳は降りかかっていた。
キャンプ場には他に2張りのテントがあったが、両方ともカップル。一人でサンマ丼をかっ込む姿は、誰から見ても寂しい背中なのだろう。しかし昼食をくるみ餅のみで、350km以上の行程をバイクで走ってきた身体には、なんとも形容しがたい美味さが染み渡る。
「うめぇ」
思わず声に出す。
「はぁ、うめぇ」
少し周りに対する見栄や意地もあったのかもしれない。再び声に出してみる。サンマ丼が入ったコッヘルを猛烈な勢いで空にして、ビールを片手に長椅子に寝転んだ。
はっとした。
いつの間にか、周囲はランタンの明かりがなければ判別できないくらい漆黒に包まれていた。長椅子で仰向けになった僕の視界には、漆黒の空に無数の輝く光の粒がばら撒かれていた。
圧倒的だ。何等星まで見えているのか、星座に詳しいわけでもない僕には判断のしようがないが、とにかく数え切れない星々が降り注いでくる。過言ではない。黒よりも白が多いのだ。
「夜のピクニック」では、「グラニュー糖をばら撒いたような」と表現していた。さすが作家さん、上手い表現をするもんだ。あまりにも星の存在感が強すぎると、吸い込まれるような恐怖を感じるともあったが、それも共通した印象だった。僕は吸い込まれるというより、漆黒の空から漆黒の地上へ光が伸びてきて、押しつぶされてしまいそうな圧迫感すら覚えた。
その圧迫感と時折打ちつける冷たい風に耐えながら、しばし見とれた。ここ10年、こんな夜空を眺めた経験はない。圧倒的だ。とにかく圧倒的なのだ。
辺りは静寂に包まれている。風と波の音が押し寄せてくるものの、清冽な光のシャワーが彼方に追いやり、遠くの情景のような錯覚を覚える。
悠久の星々の時間の中で、風に晒された身体が寒さを自覚するまで、僕は飽きずに無造作にばら撒かれた光の大群を眺めていた。
その日の晩御飯は、秋刀魚の缶詰をご飯にかけたサンマ丼。途中のくたびれた商店で買ったビールとよく合う。テントの設営を終えて、キャンプ場備え付けの木のテーブルと長椅子で食事の用意を始めた頃から、夜の帳は降りかかっていた。
キャンプ場には他に2張りのテントがあったが、両方ともカップル。一人でサンマ丼をかっ込む姿は、誰から見ても寂しい背中なのだろう。しかし昼食をくるみ餅のみで、350km以上の行程をバイクで走ってきた身体には、なんとも形容しがたい美味さが染み渡る。
「うめぇ」
思わず声に出す。
「はぁ、うめぇ」
少し周りに対する見栄や意地もあったのかもしれない。再び声に出してみる。サンマ丼が入ったコッヘルを猛烈な勢いで空にして、ビールを片手に長椅子に寝転んだ。
はっとした。
いつの間にか、周囲はランタンの明かりがなければ判別できないくらい漆黒に包まれていた。長椅子で仰向けになった僕の視界には、漆黒の空に無数の輝く光の粒がばら撒かれていた。
圧倒的だ。何等星まで見えているのか、星座に詳しいわけでもない僕には判断のしようがないが、とにかく数え切れない星々が降り注いでくる。過言ではない。黒よりも白が多いのだ。
「夜のピクニック」では、「グラニュー糖をばら撒いたような」と表現していた。さすが作家さん、上手い表現をするもんだ。あまりにも星の存在感が強すぎると、吸い込まれるような恐怖を感じるともあったが、それも共通した印象だった。僕は吸い込まれるというより、漆黒の空から漆黒の地上へ光が伸びてきて、押しつぶされてしまいそうな圧迫感すら覚えた。
その圧迫感と時折打ちつける冷たい風に耐えながら、しばし見とれた。ここ10年、こんな夜空を眺めた経験はない。圧倒的だ。とにかく圧倒的なのだ。
辺りは静寂に包まれている。風と波の音が押し寄せてくるものの、清冽な光のシャワーが彼方に追いやり、遠くの情景のような錯覚を覚える。
悠久の星々の時間の中で、風に晒された身体が寒さを自覚するまで、僕は飽きずに無造作にばら撒かれた光の大群を眺めていた。
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