朝日を見にいこうよ。
2005年5月5日 ツーリング自然に目が覚めた、というよりは眠りが浅くて常に覚醒に近い状態であったためだ。三陸海岸のキャンプ場で小さなテントの中で、白んでいく外の世界と無数の小鳥のさえずりによって、夜明けの気配を感じ取ることができた。
午前4時。睡眠時間は3時間程度。もう一眠りも十分可能だが、既に身体は交感神経を支配者として受け入れたのか、全く寝付ける気がしなかった。そうだ、僕は旅をしているんだ。
そして、ふと思いついた。ここは三陸海岸。天気が良ければ日の出が見られる。
テントを出てみると、満天の星が降った昨晩の影響で底冷えはするものの、空は十分晴れている。
いける。朝日を見に行こう。
寝起きにも関わらず、そう決めてからの行動は早かった。ジャケットを着込み、ジャージの上からジーンズを穿く。タンクバックにカメラを積んで、他のキャンプ客を起こさぬよう、静かに拍動すらしていないモンスターを公道まで押していく。
普段は始動性が極めて悪い愛車だが、今朝は彼も寝起きがいい。一発で目覚めた後、少し離れた駐車帯で朝の体操とばかりに暖気をする。空は次第に明るさを増していく。日の出の瞬間を見たい僕は、少し焦り始めた。
おい、行くぞ、大丈夫、ゆっくり走るから。
まだ十分に暖まったとはいえない鉄の馬は、しぶしぶ僕を背中に乗せた。
「るるぶ北東北」の裏表紙に載っていた景勝地の北山崎を目指す。日本の海岸百景だか何かで、キャンプ場から10kmもない距離。山道に入ってモンスターのご機嫌を伺いながら右コーナーをクリアしたところで、目の前が急激に開けた。
太平洋は朱に染まっていた。まだ水平線より数メートルしか上に出ていないんじゃないかと思うようなオレンジの球体が、海に一筋の鮮やかな道を創っている。日の出の瞬間を見逃した悔恨よりも、神々しいまでの姿に畏敬の念すら覚える。いや、神々しいという表現はおかしいかな。古来より太陽は神そのものなのだから。
朝日が僕とバイクの影を映し出した。「今ここにいる」という単純な事実が証明されて、僕は嬉しくなった。下りの直線で「ゆっくり走る」という前言をあっさり撤回して、アクセルをめいっぱい開ける。朝の空気を切り裂いて、その高揚から至るリクエストにモンスターは素直に応えてくれた。
一日の始まりは、かくも美しく、かくもドラマティックなのに。それが毎日繰り返されているということすら、普段僕らは意識していない。確かに日常はいちいち感動することを時間的に許さないが、こんなに素晴らしい世界がすぐそこに存在していることを覚えておくことは、決して無駄じゃないように思う。
気付かないだけなんだ。
北山崎の断崖が橙に染まっている。清冽な空気を身にまとって。
僕は思い切り深呼吸をする。潮風が肺を占領して、今日一日の旅が始まる。
午前4時。睡眠時間は3時間程度。もう一眠りも十分可能だが、既に身体は交感神経を支配者として受け入れたのか、全く寝付ける気がしなかった。そうだ、僕は旅をしているんだ。
そして、ふと思いついた。ここは三陸海岸。天気が良ければ日の出が見られる。
テントを出てみると、満天の星が降った昨晩の影響で底冷えはするものの、空は十分晴れている。
いける。朝日を見に行こう。
寝起きにも関わらず、そう決めてからの行動は早かった。ジャケットを着込み、ジャージの上からジーンズを穿く。タンクバックにカメラを積んで、他のキャンプ客を起こさぬよう、静かに拍動すらしていないモンスターを公道まで押していく。
普段は始動性が極めて悪い愛車だが、今朝は彼も寝起きがいい。一発で目覚めた後、少し離れた駐車帯で朝の体操とばかりに暖気をする。空は次第に明るさを増していく。日の出の瞬間を見たい僕は、少し焦り始めた。
おい、行くぞ、大丈夫、ゆっくり走るから。
まだ十分に暖まったとはいえない鉄の馬は、しぶしぶ僕を背中に乗せた。
「るるぶ北東北」の裏表紙に載っていた景勝地の北山崎を目指す。日本の海岸百景だか何かで、キャンプ場から10kmもない距離。山道に入ってモンスターのご機嫌を伺いながら右コーナーをクリアしたところで、目の前が急激に開けた。
太平洋は朱に染まっていた。まだ水平線より数メートルしか上に出ていないんじゃないかと思うようなオレンジの球体が、海に一筋の鮮やかな道を創っている。日の出の瞬間を見逃した悔恨よりも、神々しいまでの姿に畏敬の念すら覚える。いや、神々しいという表現はおかしいかな。古来より太陽は神そのものなのだから。
朝日が僕とバイクの影を映し出した。「今ここにいる」という単純な事実が証明されて、僕は嬉しくなった。下りの直線で「ゆっくり走る」という前言をあっさり撤回して、アクセルをめいっぱい開ける。朝の空気を切り裂いて、その高揚から至るリクエストにモンスターは素直に応えてくれた。
一日の始まりは、かくも美しく、かくもドラマティックなのに。それが毎日繰り返されているということすら、普段僕らは意識していない。確かに日常はいちいち感動することを時間的に許さないが、こんなに素晴らしい世界がすぐそこに存在していることを覚えておくことは、決して無駄じゃないように思う。
気付かないだけなんだ。
北山崎の断崖が橙に染まっている。清冽な空気を身にまとって。
僕は思い切り深呼吸をする。潮風が肺を占領して、今日一日の旅が始まる。
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