ドン・キホーテ

従者はただ勇者に従うのみ。

僕はBMW　K1200の後方に付いて、DUCATI　M400のアクセルを必死に開ける。ビキニカウル越しに風車が回る。丘の上の白く大きな風車が回る。

なんだ、まるでドン・キホーテじゃないか。

悪竜とおぼしき白い風車に向かって、現代のロバは100km/h以上のスピードで疾走する。景色はあっという間に流れ、風車との距離を詰める。

六ヶ所村を過ぎて、下北半島を北上する。八戸周辺から気温は一気に下がって、ヘルメットを抜ける風が冷たくなった。ドン・キホーテが槍を手にスペインの大地を駆けたように、僕らは春近い北の空気を引き裂いていった。