メリーゴーランド

2006年12月27日 読書
今年最後の荻原浩作品。田舎がモデルで「オロロ畑でつかまえて」と共通するような背景。荻原節はこの作品でも健在で、テンポがよく一気に読み進められる。

荻原作品の多くで共有する要因として「プレゼン」がある。もちろん作者の広告代理店勤務の経験からくるが、その緻密な描写が全体のリアリティを形成し、巧みに個々の作品に組み込んである。

あと特筆すべきはラストシーンの美しさ。「メリーゴーランド」は「明日の記憶」と双璧だと思う。誰もいない、もう誰も乗ることのない、小さなメリーゴーランド。市内を見渡す山の上で、最後の電源が入る。

祭りの後の虚無感や、本来ならば人を楽しませるための存在が、いろいろなエゴによって消え失せてしまう儚さ、一公務員が成し遂げたはずの栄光と挫折。様々な人間の想いを載せて、メリーゴーランドは回る。

最近読んだ小説の中では、読後の清涼感がいいのも荻原作品。決して完全ハッピーエンドではないにも関わらず、そう思わせるのは、きっとそれだけ感情移入しているからかもしれない。

ホント、今年は荻原浩三昧の一年でしたなぁ。

ISBN:4101230331 文庫 荻原 浩 新潮社 ¥620

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索