人吉に到着してから、人吉城跡を回る。素朴なお城で荒積みの石垣が美しい。本丸から市内を見渡すと、永国寺、別名ゆうれい寺が望める。
ゆうれい寺は有名な「ゆうれい掛け軸」があり、いわば日本の幽霊のイメージを形作ったルーツとなるお寺である。足がなく、髪を乱し醜いその姿は、この世に未練を残して成仏できずにいる女性・・・。日本人なら誰しもが思い浮かぶであろう幽霊が描かれている。
観光客がぞろぞろ、と予想していたが、駐車場には車が数台停まっているだけで、静かな雰囲気を醸し出している。隣にはお寺が経営しているのであろう幼稚園が併設されているものの、祝日のためか人の気配はない。また西南戦争時の薩軍の本営があったそうで、鹿児島県民としてはなぜかちょっとした因縁すら感じてしまう。
本堂に上がると、和尚さんの法話（と言うか、ゆうれい寺の起源）がVTRで流されている。しばらく僕らも正座をして聞いていたが、長くなりそうなので申し訳ないけれど中座。早速掛け軸を拝見した。
確かに寂しげな幽霊が、なにかを訴えるかのようにこちらを見ている。夜な夜な池に現れる幽霊に自分の姿を映した鏡（だったと思う）を見せると、死んだ時のまま美しいと思っていた幽霊はその醜い容姿に衝撃を受ける。
「こんな姿でいるのは堪えられません。和尚さん、成仏させてください」
とお願いすると、
「喝！」（と言ったかどうかは定かではありません）
和尚さんの声に無事成仏なさいましたとさ。
なんてことをVTRで言っていたような・・・
夜見るとおそらく恐怖心は倍増すると思うのだが、なにぶん雲ひとつない青空の下では雰囲気も出ない。あんまりオカルト的な存在は信じていないが、きちんと構成されたストーリーを聞いていると、実際に昔の人には見えていたんじゃないかと信じさせる信憑性があるようにも思えてくるのが不思議。
でもVTRの中で和尚さんの「ゆうれいは人の心が見せるものです」（的なことを言っていたような・・・）との言葉に「さすが和尚、うまい事言うなぁ」と感心したことと、向かいの餃子専門店が美味しかったことで僕は満足です。
隣の幼稚園では、幽霊のことをどう教えているのかな、と余計な心配をしてしまった。
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