球泉洞の駐車場で彼女が立ちゴケをした。ガソリンが漏れてプラグがカブってしまったため、しばらくエンジンはかかりそうにない。彼女に怪我はなく(後で右足に傷があることが判明したが)、黄色いモンスターも大きな損傷はなさそうだったのだが・・・一箇所、これから長距離を走行するのに支障となるようなダメージが残っていた。

それは、クラッチペダル。逆L字型になっているペダルの先端が折れ曲がって、つま先が大層入れづらい。200kgほどのバイクの車重が一点にかかったようなものなので、手でいくら力を込めても到底曲げられそうもない。

さて、どうしたもんか。球泉洞は人吉と八代のちょうど中間点。一瞬、鹿児島に戻って車で出直そうか、とまで考えた。

そこに1人の親切な人が現れた。サングラスをかけたライダーで、「どちらまでですか?」と話しかけてきてくれた。そこで、八代経由で熊本に向かうこと、立ちゴケしてペダルが曲がったことなどを説明し、人吉と八代どちらに向かうべきなのかを聞いてみた。

するとひと通りペダルを見て、
「バイクショップなら八代の方があるし、ここからは下りなので、そんなにギアチェンジせずに走れますよ」
とのアドバイス。迷っていた僕らは、その一言で進路を決めた。まさにアメリカンバイクのライダーといった風情の強面お兄さんだったが、とても親身になってくれた。ありがとう。

しばらく走るとガソリンスタンドが見えてきた。「ペンチか何かを使えば、もしかしたらペダルが曲がるかもしれない」そう考えた僕らは、スタンドに立寄って工具を借りることに。

そこのおじさんも親切で、工具を貸してくれた上に、近くのバイクを扱うお店を教えてくれた。結局、僕らはお礼を述べただけで立ち去ってしまった。後で考えたら、少しでもガソリンを入れときゃよかったと反省。でも通りがかりの僕らを温かく迎え入れてくれたおじさん、ありがとう。

八代市内に入ってもバイク屋さんは見当たらず、結局熊本まで行ってしまおうということになった。八代から熊本まで高速を使い、市内に向かう幹線道路でバイクショップを探す。普段はちょこちょこ目に付くものだが、いざ探そうとするとなかなか見つからないものだ・・・

と思っていたら、反対車線にYAMAHAの看板を発見。Uターンして、お店を覗いてみると、GWだけど営業している。整備工場の奥では、バイクをばらして整備している人がいた。

事情を話すと、整備中のバイクを置いて、早速見てくれた。
「う〜ん、もしかしたら折れちゃうかもしれないけど、直してみましょうか」
バーナーであぶって、その熱で曲げるらしい。アルミのペダルはバーナーの炎で白く輝き、段々原型に戻ってくる。錬金術を見ているようで、一種感動すら覚える。どうやら腕のいい職人さんらしい。

ペダルの形状はすっかり元通りになったが、やはり強度は保証できないという。もしツーリング中に折れてしまう事態を想定して、ペダルの途中の部分に穴を開け、そこにネジで突起を差し込むことができるようにしてくれた。そこまでしてくれて修理代も格安。

ありがとう。次にバイクを買うときは、このお店から買ってあげたいと思うくらい感謝です。

ホテルに着くと、駐車場は立体でバイクを置く場所がない。フロントで聞いてみたら、「じゃ、前のお店のスペースを空けますから、そこに停めてください」とのこと。「ここならフロントから見えますから」と防犯上の気遣いまでしてくれた。街中のシティホテルではバイクの駐車場所にいろいろと苦労をすることもあるが、ここまで親切にしてくれたおもてなしの心に感謝。ありがとう。

夜は熊本市内に出て、なぜか「世界の山ちゃん」で手羽先を食す。市電を利用したのだが、僕らが料金をわからないでいると、隣に座っていたおばちゃんが、「どこから乗ったの?あぁ、そこからだったら160円だよ」と教えてくれた。ありがとう、おばちゃん。つり銭なしで、ちゃんと払えたよ。

旅に出ると、こんな親切がやっぱり嬉しい。心の「ふれあい」を実感できて、優しい気持ちになる。僕が反対の立場だったら、僕は困っている人に温かい言葉をかけることができるだろうか。少なくとも「そうありたい」と願う。

ありがとう、5人の熊本の名前も知らない親切な人々。

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