今回の旅では「目」に関する忘れ物がふたつ、すなわちメガネとコンタクトのケースを忘れるという失態を演じた。ま、メガネは諦めるしかないけど、コンタクトのケースはコンビニにも売ってるから大した問題じゃねぇな、と僕は思っていた。見くびっていた、と言ってもいい。
石見の海岸のキャンプ場で設営を終え、温泉に浸かりながら美しい夕陽を眺め、コンビニで食材とビールを仕入れ、一杯引っ掛けながら久しぶりの野外ご飯に舌鼓を打つ。外で食べるとサンマ缶と白飯だけでも十分美味しいのだ。
500mlの缶ビールを全て流し込み、柔らかな酔いに身を任せる。至高の時間だ。さて、これから周囲のテントのライダーさんと焼酎でも飲みますか。今回のお供焼酎「八幡」を引っ張り出した時、ふと思い出した。
「あ、コンタクトのケースないじゃん」
バイクで2、3分、せいぜい5分走れば買出しをしたコンビニがある。ただもうビールの500缶を空けちゃった僕は、飲酒運転をするか、歩いていくかの二者択一に迫られた。往々にして、こんなときに限って事故は起こるし、勤勉な警察が取締りをやってたりする。こんなことで人生を狂わせるのもバカバカしい。
てことで、徒歩で進軍開始。街灯が殆どない国道をひたすら南下する。猛スピードの車が走り抜けていく度に、こちらに突っ込んでくるんじゃないかという、ちょっとした恐怖心が湧き上がる。僕を認識しているとは思えないし、あいにく黒のメッシュジャケットは周囲の闇と同化していて、ドライバーの視認性も極端に低いだろう。
バイクで5分であっても、徒歩では笑えないくらい遠い。真っ暗闇の向こうにローソンの青い看板を認めたときは、そりゃ素直に嬉しかったですよ。駆け足で暗闇から逃げ出すようになりながら、僕は文明社会に復帰した。
無事買い物を済ませ、「さて、あの道をまた戻るのか」と考える。暗澹とした気持ちになった僕は、生まれて初めての決心をするに至る。
「誰かに乗せていってもらおう!」
ヒッチハイクともいう。
駐車場に並んだ車を物色?する。女性、カップル、ヤンキーは除外。ローダウンとか高級車とか、一見恐そうな車も除外。すると、駐車場の端にシルバーのレガシーが停まっているのが目に入った。仕事帰りのサラリーマンだろうか、ワイシャツにネクタイといういでたち。もう出発するのだろう、後部座席に荷物を置き、運転席に乗り込もうとしている。
勢いで声を掛ける。
「すいません、どちらにお帰りですか」
きょとんとした顔でこちらを見返す。
「ああ、江津ですけど・・・」
僕はたたみ掛ける。
「私はツーリングでこちらに来て、この先のキャンプ場に泊まっている者ですが、キャンプ場の入り口まで乗せていただけませんか?」
するとあっさり
「いいですよ」
とのお返事!助手席を片付けてくれ、僕を招き入れてくれた。
「どうしたんですか?」
「お酒飲んじゃったから、歩いてきたんですよ」
「バイクで来てるんですか?」
「はい、鹿児島から」
「キャンプ場ってどの辺ですか?」
「あ、2個目の信号の付近までお願いします」
「あ、ここでいいですよ。ありがとうございます」
「結構距離ありましたね」
「本当に助かりました!ありがとうございます!」
「では楽しんでいってください。良い旅を」
おお、なんていい人なんだろう!レガシーは穏やかな一陣の夜風のように、暗闇の彼方に去っていった。ありがとうございました。ヒッチハイクなんて我ながら思い切ったもんだと今になって思うけど、独り旅だからこその経験なのかも。
石見の海岸のキャンプ場で設営を終え、温泉に浸かりながら美しい夕陽を眺め、コンビニで食材とビールを仕入れ、一杯引っ掛けながら久しぶりの野外ご飯に舌鼓を打つ。外で食べるとサンマ缶と白飯だけでも十分美味しいのだ。
500mlの缶ビールを全て流し込み、柔らかな酔いに身を任せる。至高の時間だ。さて、これから周囲のテントのライダーさんと焼酎でも飲みますか。今回のお供焼酎「八幡」を引っ張り出した時、ふと思い出した。
「あ、コンタクトのケースないじゃん」
バイクで2、3分、せいぜい5分走れば買出しをしたコンビニがある。ただもうビールの500缶を空けちゃった僕は、飲酒運転をするか、歩いていくかの二者択一に迫られた。往々にして、こんなときに限って事故は起こるし、勤勉な警察が取締りをやってたりする。こんなことで人生を狂わせるのもバカバカしい。
てことで、徒歩で進軍開始。街灯が殆どない国道をひたすら南下する。猛スピードの車が走り抜けていく度に、こちらに突っ込んでくるんじゃないかという、ちょっとした恐怖心が湧き上がる。僕を認識しているとは思えないし、あいにく黒のメッシュジャケットは周囲の闇と同化していて、ドライバーの視認性も極端に低いだろう。
バイクで5分であっても、徒歩では笑えないくらい遠い。真っ暗闇の向こうにローソンの青い看板を認めたときは、そりゃ素直に嬉しかったですよ。駆け足で暗闇から逃げ出すようになりながら、僕は文明社会に復帰した。
無事買い物を済ませ、「さて、あの道をまた戻るのか」と考える。暗澹とした気持ちになった僕は、生まれて初めての決心をするに至る。
「誰かに乗せていってもらおう!」
ヒッチハイクともいう。
駐車場に並んだ車を物色?する。女性、カップル、ヤンキーは除外。ローダウンとか高級車とか、一見恐そうな車も除外。すると、駐車場の端にシルバーのレガシーが停まっているのが目に入った。仕事帰りのサラリーマンだろうか、ワイシャツにネクタイといういでたち。もう出発するのだろう、後部座席に荷物を置き、運転席に乗り込もうとしている。
勢いで声を掛ける。
「すいません、どちらにお帰りですか」
きょとんとした顔でこちらを見返す。
「ああ、江津ですけど・・・」
僕はたたみ掛ける。
「私はツーリングでこちらに来て、この先のキャンプ場に泊まっている者ですが、キャンプ場の入り口まで乗せていただけませんか?」
するとあっさり
「いいですよ」
とのお返事!助手席を片付けてくれ、僕を招き入れてくれた。
「どうしたんですか?」
「お酒飲んじゃったから、歩いてきたんですよ」
「バイクで来てるんですか?」
「はい、鹿児島から」
「キャンプ場ってどの辺ですか?」
「あ、2個目の信号の付近までお願いします」
「あ、ここでいいですよ。ありがとうございます」
「結構距離ありましたね」
「本当に助かりました!ありがとうございます!」
「では楽しんでいってください。良い旅を」
おお、なんていい人なんだろう!レガシーは穏やかな一陣の夜風のように、暗闇の彼方に去っていった。ありがとうございました。ヒッチハイクなんて我ながら思い切ったもんだと今になって思うけど、独り旅だからこその経験なのかも。
コメント