ふたつのミュージアム 前編
今回、同じ日に戦争と平和をテーマにしたふたつのミュージアムを訪れる機会に恵まれた。松山の「坂の上の雲ミュージアム」と呉の「大和ミュージアム」。どちらも興味を持っていたので、ツーリングの予定に組み込んだ。

まずは「坂の上の雲ミュージアム」。昨年建てられただけあって、きれいでモダンな建物だ。少し通りを中に入ったところにひっそりと佇む風情。なかなか期待できそう。

しかし入館して、すぐに感じた違和感。
ここは一体何を目的とした場所なのだろうか?

飾られている展示物は司馬遼太郎の「坂の上の雲」とは全く関係がない。芸能人やらスポーツ選手が書いた感想文やイラストなどが並ぶ。
何なんだ、これは?

「坂の上の雲」のテーマは、上を向いて進んでいく明治時代の「普通」の人たちを描写することにあると僕は思っている。司馬遼太郎が賛美して止まない時代(昭和の軍部を痛烈に批判している)を、夢中でガムシャラに突き進む姿に感銘を受けた人も多いことは理解できる。ただここは公共の「ミュージアム」であり、著名人の作品に対する印象を共有したくて来ているわけではない。

一番驚いたのは、四国独立リーグ(野球)選手のサインバットが置いてあったことだ。そこに名前を刻んだ選手たちは、独立リーグからプロ野球にドラフト指名され、夢を叶えた存在として展示してあると想像されるのだが・・・なにもここにある意味はないんじゃねぇか。結局、こんな違和感が最後まで消えることはなかった。

秋山兄弟に関する資料も物足りなかったし、正岡子規の展示ももっと工夫があって然るべきと思う。「坂の上の雲」という国民的ベストセラーに乗じた、作品とは関連性の薄い展示の陳列と感じてしまったのは、もしかすると僕の感受性の問題なのかもしれない。でも、やっぱりねぇ・・・

確かに、この種のミュージアムは評価が難しい。なにせ作品の捉え方は千差万別だし、一方の視点に偏在するわけにもいかない。広く薄くという作り方は致し方ないのかもしれないね。

ただ、このミュージアムが司馬遼太郎氏が存命の間には建設されなかったことに注目する必要がある。「坂の上の雲」という小説のドラマ化を許可しなかったように、この内容ではゴーサインは出さなかったんじゃないかな、きっと。

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