そう考えたのは単なる思い付きと、一年の初めくらいは「何かを見下ろす」立場に立ちたいという願望があったからかもしれない。とにかく僕は、バイクを駆って開門岳の麓にいた。

天気は最高と言っていい。抜けるような青空と適度な気温。11時過ぎに駐車場に着いた僕は、おもむろにイカくんのトップケースから登山靴を取り出し、バイク仕様から山登りモードに装備を変える。さ、久々の山登り。胸が躍る。

開門岳は二合目から登山道が始まる。入り口の看板には「成人の登山目安は150分」と記されている。ゆっくりと一歩一歩を踏み出していくと、案外疲れない自分に驚く。正月太りできっと体重はプラス2,3kgになっているにも関わらず、順調なスタートを切ったと言えるだろう。

八合目くらいまでは、一人という気楽さと意外と楽に登れた安心感で、次々と前の登山客を抜かしていった。箱根駅伝の「何人ゴボウ抜き」なんて報道がされるが、まさにそんな気分。山登りは決して速さを競うものではない、という単純な法則は理解していても、なぜだかゴボウ抜きの自分に優越感にも似た感情を有してしまうのは、僕がきっと小さい人間だからかもしれない。

八合目以上では、徐々に元旦に降ったのであろう雪が残っていた。九合目を過ぎ岩場に差し掛かると、登山客で踏み慣らされた雪が凍ってつるつるに光っている。ちゃんとした登山用の靴を履いている僕でさえ滑るのだから、「開門岳だから大丈夫じゃね?」と嵩を括っていた連中は、さぞ難渋したことだろう。実際、帰りに革靴を履いた奇特な人とすれ違ったが、恐らく彼は頂上には到達できていないだろう。

南国鹿児島で氷に悩まされるという稀有な環境を克服すると、そこは924mの頂上が待っている。頂上の岩場にはたくさんの人たちがたむろしている。やっぱり、同じ事を考える人は大勢いるのね、と自分を正当化しつつ昼ごはん。時計は13時。ちょうど1時間半、90分で登ったことになる。30分弱、頂上で下界を見下ろす快感に身を委ねる。桜島はもちろん、遠く高千穂や屋久島も望むことができた。

下山時には登る時以上の慎重さが求められた。凍った岩場は、一歩間違えば滑落に繋がる危険なゾーンであり、それを皆が認識していたため、たたでさえ狭い下山ルートは大渋滞。笑ったのが、アイルランド人のちょっと太目の女性。立って降りることに危険を感じたのだろう、つるつるの岩場に大きなお尻をはめ込んで滑り台よろしく滑っていく。いちいちオーバーアクション気味に騒ぎながら滑るため、否が応でも注目を浴びる。とても微笑ましいのだけど「ああはなるまい」と心に誓う、メタボ予備軍の35歳。

下山に要した時間は1時間15分。登りとあまり変わらないのは、渋滞の影響だろう。久しぶりの山登りで最後は膝が笑っていたけれど、一人で登る山も悪くないなと認識できた。

「今年は10峰を目標に山を登る」
これが今日立てた抱負。やりたいことややらなきゃいけないことは、それこそ山ほどあるけど、屋久島を含めてこの目標はぜひ達成したいもんだ。

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