法隆寺と中宮寺
法隆寺には9時前に着いた。駐車場もほとんど車が停まっておらず、大混雑を予想していた僕はちょっと拍子抜けしながら、人通りの少ない参道を歩く。さすが日本最古の木造建築で世界遺産、参道の両脇にはお土産屋さんやら食事処やらがずらっと並ぶ。

法隆寺に入ると奥に五重塔が見え、テンションは否が応にも高まってくる。この旅初めてのお寺が、かくも有名で国宝クラスの仏像が目白押しなのだ。楽しみ、というか、畏れ多い気持ちが強い。

法隆寺はとてもきれいで、仏様の見せ方も上手。西院伽藍の釈迦三尊像や薬師如来像は飛鳥時代の特徴を如実に表した、細身の仏像。柔らかな印象で、ちょっと頼りなさげにも見えるけど、長年に亘って日本の盛衰をその柔和な表情で見守ってきたかと思うと感慨深い。日本最古とされる五重塔と金堂のバランスも絶妙、なのだろう。少なくとも僕はそう思った。

平成10年に落成したという博物館の趣きの大宝蔵院。やっぱり大切な寺宝を保管し、後世に伝えていくためにはこういう博物館的な建物は必要なんだろうけど(興福寺もそうだし)、信仰の対象というよりは美術品として扱われている印象があって、なんとなくガラスケースの向こうにいる仏様が寂しげに見えた。ただ教科書に出てきた玉虫厨子やコミカルな十二神将などに興奮しきり。

百済観音堂ですらりと細身の百済観音像を見て、特別拝観の「法隆寺秘宝展」、夢殿の八角形のユニークな建物と救世観音像など、息つく暇もなく一気に見て回ったため、少々混乱してきたことも事実。しかし、この旅最初のクライマックスは、法隆寺の隣にひっそりと佇むお寺にあるのだ。夢殿の奥に「中宮寺こちら」との立て看板を見て、ドクンと心が弾むのを自覚する。

法隆寺の賑わいに比べると、この中宮寺に足を踏み入れる人の数は極めて少ないんじゃなかろうか。拝観料を払っていただいた「拝観のしおり」もカラーの法隆寺に対して、白黒で少し見劣りしてしまうが、そんなもので価値を測る愚は犯すまい。「菩薩半跏思惟像」がそこに鎮座されているのだから。

本堂に上がると、その菩薩様が「アルカイックスマイル」「飛鳥の微笑み」と称されるお姿を見せた。写真越しではない本物の迫力を体感しようと、感性を研ぎ澄ます(実際、どこまで研ぎ澄まされたかは疑問だが)。予想よりも少し小さく見えた黒く光る像の前に座り、正面から対峙してみると自然と涙がこぼれそうになる。大げさかもしれないけど、ホントにそうだったのだからしょうがない。気品高く微笑みつつ、右手を頬に近づけて思慮する姿は、我々の救いを見出そうと考えているのだろうか。そして僕にも救いがあらんことを、頭を垂れて強く祈った。

中宮寺を辞した頃には、さすがに法隆寺周辺は相当の混雑を呈していた。駐車場のムルティの無事を確認し、隣の食堂にてカツとじ丼で腹ごしらえ。満腹になったところで、次の目的地の法起寺と法輪寺に向かった。

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